ビッグイシュー

存在を知るまでは、ひたすら「あやしい…」の一言に尽きる、
そんな印象だったビッグイシュー。
ビッグイシュー
典型的なハリウッド俳優の顔がでかでかと表紙になっていて、
わりとペラペラに見える雑誌が300円。路上で売っているという販売方式も
どこか違法な空気が漂うし、売っている人も失礼ながらただならぬ雰囲気が…。
そう、目につくものがすべて「あやしい」オーラにつつまれて見えたのです。
それがあるとき、その雑誌はビッグイシューというもので、ホームレスの人たちの
仕事をつくり、自立を応援する英国発の事業だったことを知るのです。
300円の売り上げのうち、160円は販売員の収入になるというシステム。
「見てみぬふり」、なんともいやな響きだけれども、
実際声をかけるという勇気もなく、何も見えていないかのごとく通りすぎていく違和感。
300円でその違和感がなくなるとは思えないけれど、とりあえず買ってみた。
そして、これがなんとおもしろかったのだ。
冒頭の著名人のインタビューは、もしかして世界共通なのかもしれないけど、
ビッグイシュージャパンならではの特集記事の着眼点がユニークだ。
たとえば、139号の特集「耳をすます」。
4歳の時に失明した三宮麻由子さん(エッセイスト)のインタビューでは、
スズメの鳴く声で時間や天気を聞き分けたり、「花火は光の芸術といわれるが、
私には音の芸術のように感じられる」(『そっと耳を済ませば』より)という、
「耳をすます力」、音の目線でとらえた世界が語られている。
ほかにも、「どろんこ万歳、土と人の生活世界」「果てしなさとは?宇宙近づく冬の
夜空」「隣のHIVとつきあう」「“派遣”生きる30代シングル女性」「道に迷ったら
虫に聞け」などなど、テレビ、新聞、一般雑誌とはまた違った視線で、今起こっている
現象や知識の幅を広げてくれる。
連載では、雨宮処凛の「世界の当事者になる」という骨太のコラムあり、
「ホームレス人生相談」では、読者の人生相談に
毎回ちがったホームレスの方が回答してくれるというコーナーだ。
教科書的なアドバイスではなく、長い人生をいきてきて発せられる言葉。
親戚のおじさんにそっと愚痴を聞いてもらったようなあたたかさもある。
何より同じ寄付でもたどりつく人の顔がみえるというのは、ある意味すっきりしている。
たとえば募金にしても、かならず仲介者がいていつか誰かが届けてくれることを信じて、
お金を託すのだけれど、ごく一部のことかもしれないが、一番必要としている現地には
物資も資金もなかなか届かない、という話を聞いたことがある。
この100円が直接、販売員さんの何か必要な物にかわっていく。
定期的に購入するようになるとあいさつをするようになり、
自然に声もかけられるようになった。
派遣切りの問題や、年越村の記事をみつけると、
人ごとのように思えなくなり、身を入れて読むようにもなった。
気がつくと自分の側に小さな変化がでてきたように思う。
たくさんのおみやげをもらったのは、わたしの方かもしれない。
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